大分県の地質・地形

1.大分県の地質と地形

大分県には最も古い黒瀬川構造帯を構成する部分から現在までの様々な地質が分布する(唐木田ほか、1992)。それらの地質地域は、この地域に存在する重要な構造線により境されている。それらは北部から松山-伊万里構造線、大分-熊本構造線、臼杵-八代構造線、仏像構造線である。このうち臼杵-八代構造線は、北側の領家帯(内帯)と南側の秩父帯(外帯)を分ける九州における中央構造線としての役目を果たしている。
仏像構造線は西南日本外帯の秩父帯と四万十帯の境界の断層である。地形的にも構造線の存在が大きく、臼杵-八代構造線以南は300~500mの高度の山地が広がるが、その北方は大野川低地帯をなし、100~300mの低地がのびる。
一方、祖母・傾山地は開析の進んだ山地地形を呈し、逆に九重山、由布岳などの第四紀火山は新鮮な地形を示している(図1)

図1.大分県を中心とした接峰面図
図1.大分県を中心とした接峰面図(等高線間隔は100m)

2.外帯の山地

臼杵-八代構造線以南の外帯は秩父帯と四万十帯から構成されており、両者は仏像構造線により境されている(図2)。秩父帯の大部分をなす山地は佩楯山地、佐伯-番匠川以南の主として四万十帯の山地は場照山地とよばれている(宮久、1972)。

図2.大分県の地質
図2.大分県の地質

(1)秩父帯の山地

秩父帯は北部の黒瀬川構造帯と南部の秩父帯南帯にあたる三宝山帯からなる。黒瀬川構造帯は臼杵地域や尾平・奥畑地域でレンズ状に分布する。主に浅海性堆積物からなるが一部で海洋性堆積物もみられる。
大分県の秩父帯の大部分は、その南帯にあたる三宝山帯に属する。臼杵市海添から弥生町床木までの南北13kmの幅を持ち、東北東-西南西方向に宮崎県境までの40kmの長さの帯状分布を示す。秩父帯はさらに鎮南山帯、津久見帯、明治帯、中野帯に細分されている。最近の研究では津久見帯を構成する水晶山層・津久見層が古生代の地層で、他はすべて中生代の地層とされている。岩相は海洋性の堆積物で、砂岩・泥岩、石灰岩、チャートなどからなり、特に石灰岩層が広く発達する。津久見市の海岸部より三重町稲積山付近まで、幅2km、長さ30kmにわたって帯状に分布する津久見石灰岩は最も典型的な石灰岩層である。

(2)四万十帯の山地

仏像構造線により秩父帯と接する四万十帯は、宮崎県北部の延岡衝上断層により北帯と南帯に分けられる。大分県に分布する四万十帯は北帯(下部四万十層群)に属する。この地域の四万十層群は下位より諸塚層群、槙峰層群、北川層群に区分される。いずれも砂岩・泥岩を主とし枕状溶岩や黒色千枚岩、タービダイトなどを含む。いずれもテクトニック・メランジュに相当し、主に白亜紀~古第三紀の堆積物である。

3.内帯の古期岩山地

内帯の古期岩は主として領家帯の変成岩・花崗岩類と、それをを基盤とする大野川層群、及び三波川帯からなる。

(1)領家帯の山地

大分県における領家帯の変成岩・花崗岩類は新期の火山岩類に広くおおわれ、わずかに国東半島と朝地地域にみられるにすぎない。ボーリング調査では豊肥火山地域の基盤をなしていることが知られている。
国東半島の変成岩・花崗岩類は日豊本線中山香駅から安岐町安岐ダム付近までと国東半島東海岸の黒津崎から臼石鼻にかけての地域に分布するが、新期火山岩類におおわれて点在的に分布するにすぎない。
朝地地域の変成岩類は朝地変成岩とよばれ、野津原町塚野付近から朝地町にいたる長さ23km、幅1.5~5kmの地域に分布する。これらはほとんど未変成の堆積岩類、結晶片岩類、蛇紋岩類・ひん岩質の岩脈類、閃緑岩~花崗岩類の貫入を受けてできた変成岩類である。

(2)大野川層群の山地

大野郡犬飼町を中心に大野川の中流域に分布する白亜紀層を大野川層群とよんでいる。北西部では連続的に分布し、とくに河原内川に沿って大野川層群の下半部の各層がみられる。大野川の東岸地域では阿蘇火砕流堆積物におおわれて分布は限られる。北側の佐賀関半島の三波川結晶片岩とは佐志生断層で、南側は臼杵-八代構造線で秩父帯と接している。
大野川層群は礫岩・砂岩・頁岩の繰り返しからなり、層厚は最大20,000m以上とされる。大野川層群下部層(下位から霊山層、奥河原内層、中河原内層に区分)は主として粗粒な礫岩、砂岩からなる。上部層は下位より柴北層、犬飼層、吉野層、津留層、海辺層に区分され、主として砂岩や頁岩からなる。大野川層群の時代は、含まれる化石(主にイノセラムス)から後期白亜紀と考えられている。

(3)三波川帯の山地

九州の三波川帯は佐賀関半島に分布し、大野川以西にはみられない。この構成岩類は佐賀関層群とよばれている。佐賀関層群は主に泥質片岩、砂質片岩、塩基性片岩などの結晶片岩類からなり、一部では蛇紋6岩類をしばしば伴う。北側は新第三系とおもに断層で、南側は佐志生断層で大野川層群と接する。佐賀関層群は主に低温高圧型の三波川変成作用を受けている。

4.新生代・新第三系及び第四系とその地形

(1)第三系

大分県の第三系のうち古第三系は漸新世・見立層で、それ以外は新第三系の火成岩類が主である。見立層は大分・宮崎県境の傾山の南部付近の秩父帯~四万十帯北部に分布する。
中新世中期に祖母山・傾山を中心として4回の火山活動が認められ、祖母山・傾山火山岩類を噴出した。活動は祖母山火砕流の噴出と祖母山コールドロンの形成にはじまる。その後傾山火砕流の噴出と傾山コールドロンの形成、祖母山成層火山の形成、祖母山・傾山両コールドロンの再沈降が続いた。さらに祖母山・傾山の火山岩類に大崩山を中心とする花崗岩体が貫入し、大分県では藤河内花崗岩体が分布する。
大分県西部の鯛生-津江地域の新第三系は主に火山岩類からなり、これは基盤を不整合におおい、更新世の火砕流堆積物におおわれる。火山岩類からなる山地は1,000~1,300mの高度を持ち、開析が進んでいる。この火山岩類を堆積させた火山活動は3期に分けられる。1期は中新世中期の鯛生層群が堆積した活動、2期は後期中新世の前津江累層を堆積させた活動、3期は鮮新世の釈迦岳火山岩類、渡神岳火山岩類を堆積させた活動である。
英彦山-耶馬渓地域から安心院を経て国東半島にいたる地域には、新第三紀~更新世の火山岩類が広く分布する。英彦山地域の新第三系は下位より山国累層、北坂本累層、英彦山火山岩類、大日ヶ岳火山岩類、夜明火山岩類に区分される。耶馬渓地域ではそれは下毛層、宮園安山岩、黒法師層、釣鐘山安山岩に区分され、それらを更新世の耶馬渓火砕流、阿蘇火砕流がおおっている。駅館川流域から国東半島にかけては中新世・宇佐層群が広く分布する。これはプロピライト化など著しい熱水変質作用を受けている。さらにその上位には耶馬渓層が分布する。

(2)第四系

大分県で第四系が発達するのは内陸の湖盆形成地域と海岸の平野地域である。玖珠盆地では玖珠層が溶岩や火砕流堆積物に覆い、覆われる関係で分布する。岩室層、宝泉寺層、野上層などがそれである。大分市周辺では新第三系の碩南層群から更新統の大分層群まで、淡水成から海成にいたる堆積物が火砕岩類を伴いながら広く発達する。それらは広く台地を形成しており、鶴崎台地や丹生台地はその典型である。
第四紀火山岩類は新第三紀からの火山活動の「活動場」を縮小しながらの連続としてみられる。大規模火砕流としては耶馬渓火砕流、阿蘇火砕流、久住火砕流が100万年前以降に噴出し、その後、豊肥火山活動としての輝石安山岩の噴出、それに続くいわゆる山陰系火山活動としての角閃石安山岩の活動がある。前者は筑紫溶岩、万年山溶岩(火山岩類)などで、別府-万年山地溝帯を中心に広く溶岩台地を形成したようで、侵食が進んだ現在でも平坦な地形を残している。一方、後者は姫島から南西方向へ、両子山、由布岳・鶴見岳、九重山へと続く火山である。
由布・鶴見火山は35,000年前以前に活動を開始し、2,000年前以降にも溶岩の流出を伴う噴火活動があった。鶴見火山は侵食が進み、別府扇状地への堆積物の供給源になっている。由布火山の山頂部には直径300mの火口があり、山腹部には溶岩円頂丘状の側火山が分布する。側火山の大部分は22,000~7,300年前に形成されたが、2,000~1,500年前には池代溶岩・由布岳山頂溶岩を噴出した。
九重火山はおよそ20万年前から活動し、現在も活動が続いている。火山活動は前期(第Ⅰ期~第Ⅲ期)と後期(第Ⅳ期~第Ⅵ期)に分けられている。活動は26万年前の久住Ⅰ軽石流の噴出に始まる。九重火山7群の主部を構成する1,400~1,700mの高度の火山体は第Ⅳ期に形成され、第Ⅴ期には大船山、平治岳などの溶岩流の流出があった。第Ⅵ期は爆裂型の活動で特徴づけられ、大船山の御池、米窪火口、平治岳の山頂火口などが活動している。1995年10月11日夕刻に星生山中腹の硫黄山付近から火山灰を噴出しはじめ、噴煙は高度1,000mに達した。
およそ9万年前に噴出した阿蘇4火砕流推積物は大分県に広く分布し、大規模な火砕流台地を形成している。特に阿蘇外輪山東方の大野川低地には臼杵まで厚く堆積している。
主として海岸地域には段丘地形が、内陸地域では扇状地が分布する。

文献

唐木田芳文、早坂祥三・長谷義隆(1992):日本の地質「九州地方」共立出版、371頁
九州地方土木地質図編纂委員会(1985):九州地方土木地質図
宮久三千年(1972):「大分県の地質」大分県、140頁

(大分大学名誉教授 千田 昇)

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※このページの掲載内容は、「レッドデータブックおおいた(2001)」によっています。