9.石灰岩地域
石灰岩地域
九州の中央部を東西に横切る臼杵-八代構造線南側の秩父帯(外帯)は、おもに古生代・中生代の堆積岩からなり、その一部に石灰岩の層が介在している。
津久見市から野津町、三重町にかけて幅2km、長さ30kmにわたり帯状に分布する石灰岩の層は最も典型的。本匠村、宇目町などにも石灰岩の露頭(ろとう)がみられる。また、地下には鍾乳洞がつくられ、代表的なものとしては狩生(かりう)、風連(ふうれん)や小半(おながら)などの鍾乳洞がある。この地域の植生はおおむね常緑樹林で、ナンテン、ビワなどを伴うアラカシ林、イヌガヤ林などがみられ、特殊な動植物相の存在が知られている。コケ植物では、石灰岩上に産するセイナンヒラゴケやキブリハネゴケ、シダ植物では、日本でこの地域だけに生育するホウライクジャク、種子植物ではこの地域に特産するタガネランがある。動物では、鍾乳洞などを住みかとするコウモリ類やメクラチビゴミムシやアリヅカムシ各種がみられ、この地域が模式標本産地となっているオナガラムシオイガイやヒメシロギセルガイなどの陸産貝類が生息しており、貴重な動植物種の宝庫となっている。しかし近年、石灰岩の採掘などの影響で絶滅のおそれの高くなった動植物種も少なくない。
地域を特徴づける野生生物
[植物]ホウライクジャク〔ⅠA(CR)〕、タチデンダ〔ⅠA(CR)〕、キドイノモトソウ〔Ⅱ(VU)〕、タガネラン〔ⅠA(CR)〕、シロバナハンショウヅル〔ⅠB(EN)〕、コミノヒメウツギ〔ⅠB(EN)〕、タチバナ〔ⅠB(EN)〕、オオクサボタン〔Ⅱ(VU)〕、セイナンヒラゴケ〔ⅠA(CR)〕、キブリハネゴケ〔ⅠA(CR)〕など。
[動物]コゾノメクラチビゴミムシ〔絶滅(EX)〕、ウスケメクラチビゴミムシ〔ⅠA(CR)〕、チョウセンスナガイ〔ⅠA(CR)〕、ヒメシロギセルガイ〔ⅠA(CR)〕、オナガラムシオイガイ〔ⅠB(EN)〕、オオイタシロギセルガイ〔ⅠB(EN)〕など。
天然記念物
「小半鍾乳洞」(国指定)、「風連洞窟」(国指定)、「狩生鍾乳洞」(国指定)など。