調査の意義

調査の意義

1.レッドデータブック作成の背景

我が国では、1989年に(財)日本自然保護協会と(財)世界自然保護基金日本委員会により、レッドデータブックの国内版として、維管束植物を対象にした「我が国における保護上重要な植物種の現状」を出版した。また、1991年には環境庁が動物を対象とした「日本の絶滅のおそれのある野生生物 脊椎動物編」及び「日本の絶滅のおそれのある野生生物 無脊椎動物編」をそれぞれ刊行した。また、動物関係の新しいレッドリストを1997年に爬虫類と両生類、1998年に哺乳類と鳥類、1999年に魚類、2000年には昆虫を公表した。一方、植物関係では、1997年に維管束植物と維管束植物以外のレッドリストを公表した。そして、2000年には環境庁から維管束植物版のレッドデータブックが発刊され、日本国内における保護すべき動植物が明確になり、野生生物を人為的に絶滅させないことの啓発活動に役立っている。

これらの国内版レッドデータブックは、全国的な視野からまとめられているため、必ずしも都道府県の現状に沿ったものとはなっていない。そのため、地域の自然環境の保全に十分に機能しているとはいえない。
したがって、地域における適切な野生生物の保護や自然環境保全の施策推進を図るためには、地域版のレッドデータブックの作成が必要となる。各都道府県においては、1995年に神奈川県、兵庫県、広島県のレッドデータブック発刊を皮切りに、全国各地でその作成の取り組みが行われている。

2.県版レッドデータブック作成の意義

我が国は、1992年の国連環境開発会議(地球サミット)において157か国により署名された「生物の多様性に関する条約」を受諾した。そして、同年6月に希少野生生物の保護を図るため「絶滅のおそれのある野生植物の種の保存に関する法律」が制定され、1995年10月には「生物多様性国家戦略」が関係閣僚会議で決定された。

近年、自然環境の改変や野生生物の絶滅に対する強い危機意識が広く社会に認識されるようになり、子や孫の世代に豊かな自然を継承することの大切さが理解されるようになってきた。
21世紀における最大の課題である生物多様性の保全に取り組むためには、その重要な基礎データ集としてのレッドデータブック(RDB)は、今後ますます重要な役割を果たすことになるものと思われる。