1 種数等について
これまで大分県で生育が確認されている蘚類460種、苔類242種、ツノゴケ類4種のうち、58種を選定対象種として、見直し調査を行った。そのうち、絶滅のおそれのある蘚苔類(選定種)は前回(レッドデータブックおおいた2011)では44種であったが、今回11種増加し、55種となった。その内訳は、ランクの変更がない種が24種、ランクが上がった種が10種、ランクが下がった種が7種、選定種から削除された種は3種、選定種に追加された種は14種である。
※県内分布に記載されている地域名は【
大分県野生植物地域区分(荒金正憲:1998)】に従った。
2 選定種に追加した種について
今回の見直し調査で新たに選定種に追加された種は計14種あった。そのうち、ⅠA(CR)に追加されたのがワタミズゴケ・トカチスナゴケ・オオカサゴケ・コハイヒモゴケ・チャボスズゴケ・ミズシダゴケの6種、ⅠB(EN)に追加されたのがクロゴケ・コシッポゴケ・ホンモンジゴケ・コウヤノマンネングサ・キヨスミイトゴケ・イトヒキフデノホゴケの6種、準(NT)に追加されたのがオオシラガゴケとカタシロゴケの2種であった。
3 ランクを上げた種について
ランクを上げた種の合計は11種。そのうち、準(NT)からⅠA(CR)に上げた種が最も多く、シバゴケ・イブキキンモウゴケ・マツムラゴケ・ハイヒモゴケ・キブリハネゴケ・セイナンヒラゴケの6種であった。準(NT)からⅠB(EN)に上げた種はクマノゴケ・ヤマトハクチョウゴケ・イチョウウキゴケの3種、IB(EN)からⅠA(CR)に上げた種はコキジノオゴケ1種、情報不足(DD)からⅠA(CR)に上げた種はヌマシノブゴケ1種であった。
4 ランクを下げた種について
ランクを下げた全7種は、全て情報不足(DD)への変更であった。コアナミズゴケ、フガゴケ、ケサガリゴケはⅠA(CR)から、コゴメツヤゴケとトガリバイチイゴケはⅠB(EN)から、ツルゴケはⅡ(VU)から、ヒメタチヒラゴケは準(NT)から変更した。情報不足からカテゴリー外に判定されたのはコキヌシッポゴケ、イワノコギリゴケ、キダチクジャクゴケの3種であった。
5 生育・生息地に大きな変動があった種について
調査に当たって、2011年に掲載した44種に加えて追加選定種とする候補種14種を注視した。調査の結果、ランクを上げた種、下げた種は共に生育環境の変化に伴い、生育する量に大きな変化が見られた。
6 その他特筆すべき事項について
蘚苔類の生育は生育地の日光の当たり方や空中湿度に影響される。河川の林縁や崖、渓谷に多くの種類が生育する。近年の高温乾燥、豪雨、洪水により生育に大きな影響を受けている。
7 参考文献等
科の配列、分布域、世界的分布、その他
- 岩月善之助 編(2001)日本の野生植物 コケ.平凡社.
蘚類の和名・学名
- Suzuki Tadashi(2016)A Revised New Catalog of the Mosses of Japan. Hattori Botanical Laboratory, 7: 9-223.
苔類の和名・学名
- 片桐知之・古木達郎(2012)日本産タイ類ツノゴケ類チェックリスト2012.蘚苔類研究,10(7): 193-210.
その他
- 大塚政雄(2012)大分県産蘚苔類ノート(19)―基準標本規定及び大分県から発表されたtype localityの蘚類―.大分県植物研究会会報『大分県の植物』,22号: 13-16.
※ページ内のカテゴリー表記については
こちらをご覧ください。