両生類

1 種数等について

現在、大分県で生息(生育)が確認されている両生類19種(外来種1種を含む)のうち、9種を選定対象種として、見直し調査を行った。
最近の両生類の分類学的再検討により、「レッドデータブックおおいた2011」では、オオダイガハラサンショウウオとされていた種は、その隠蔽種(新種)であることが明らかとなり、祖母山系固有種のソボサンショウウオとなった。また、前回ブチサンショウウオとされていた種もその隠蔽種(新種)のチクシブチブチサンショウウオとして記載され、かつ、ブチサンショウウオのシノニムとされていた隠蔽種のコガタブチサンショウウオもそれと別種であることが明らかとなった。更に、前回カスミサンショウウオとされていた種には10種の隠蔽種を含んでいることがわかり、県北のカスミサンショウウオはヤマグチサンショウウオに変更された。
これらの変更に伴い、前回のブチサンショウウオはチクシブチサンショウウオが引き継ぎ、コガタブチサンショウウオは新規選定種とした。また、前回のカスミサンショウウオは県北でしか確認されていなかったため、ヤマグチサンショウウオがこれを引き継ぎ、2019年2月に本県からカスミサンショウウオの分布は消えた。しかし、2019年11月に日田市で大分県初となるカスミサンショウウオの記録が発表されたため、このカスミサンショウウオを新規選定種とした。これらによって前回の調査と比べ選定対象種が2種増加した。

※県内分布に記載されている市町村名は【大分県旧市町村図】に従った。ただし、一部は郡名も併せて記載した。

2 選定種に追加した種について

上述の通り、分類学的再検討によりカスミサンショウウオとコガタブチサンショウウオを選定種に追加し、それぞれⅠB(EN)とⅡ(VU)にランク付けをした。

3 ランクを上げた種について

ランクを引き上げた種はいなかった。

4 ランクを下げた種について

Ⅱ(VU)に選定されていたトノサマガエルであったが、本調査で県内広域における分布を確認できたため、準(NT)にカテゴリーを変更した。

5 生育・生息地に大きな変動があった種について

前調査で確認されたヤマグチサンショウウオの生息地の多くが、宅地化や太陽光発電施設の建設等によって消失もしくは縮小しており、それらの個体群の絶滅、減少が懸念される事態となっている。ただし、本調査で新たな生息地を数カ所確認できたため、ランクの変更はない。

6 その他特筆すべき事項について

最近のサンショウウオ科における分類学的再検討によって、上記のような種名の変更が行われた。それに伴い、環境省のレッドリストカテゴリーも変更された種が多く、ソボサンショウウオ(前オオダイガハラサンショウウオ)は、Ⅱ(VU)からⅠB(EN)に、チクシブチサンショウウオ(前ブチサンショウウオ)は、準(NT)からⅡ(VU)にランクが上げられた。しかし、両種とも大分県内における生息地の環境、生息地数、生息個体数の推定値は大きな変化がみられなかったため、前回同様のⅡ(VU)、準(NT)に留めることにした。一方、カスミサンショウウオは環境省ではⅡ(VU)とされているが、大分県では日田市の1地点でしか生息記録がないためIB(EN)とした。

7 参考文献等

和名、学名、種の配列

  • 日本爬虫両棲類学会(2021)日本日本産爬虫両生類標準和名リスト,2021年4月22日版.
    http://herpetology.jp/wamei/

ヤマグチサンショウウオの和名・学名

  • Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Aoki, G., Eto, K., Yoshikawa, N., Tanabe, S., Misawa, Y., and Tominaga, A. (2019) Systematics of the Widely Distributed Japanese Clouded Salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and Its Closest Relatives. Current Herpetology, 38(1): 32-90.

コガタブチサンショウウオの和名・学名

  • Tominaga A. and Matsui M. (2008) Taxonomic Status of a Salamander Species Allied to Hynobius naevius and a Reevaluation of Hynobius naevius yatsui Oyama, 1947 (Amphibia, Caudata). Zoological Science, 25(1): 107-114.
  • Matsui M., Nishikawa K., and Tominaga A. (2017) Taxonomic relationships of Hynobius stejnegeri and H. yatsui, with description of the Amber-Colored Salamander from Kyushu, Japan (Amphibia: Caudata). Zoological Science, 34(6): 538 – 545.

ソボサンショウウオの和名・学名

  • Nishikawa K. and Matsui M. (2014) Three new species of the salamander genus Hynobius (Amphibia, Urodela, Hynobiidae) from Kyushu, Japan. Zootaxa, 3852 (2): 203-226.

チクシブチサンショウウオの和名・学名

  • Tominaga A., Matsui M., Tanabe S. and Nishikawa K. (2019) A revision of Hynobius stejnegeri, a lotic breeding salamander from western Japan, with a description of three new species (Amphibia, Caudata, Hynobiidae). Zootaxa, 4651 (3): 401-433.

その他

  • 永野昌博・小野充之・菅原弘貴(2019)大分県におけるカスミサンショウウオの新産地,九州両生爬虫類研究会誌,10号,12-13.

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