哺乳類

1 種数等について

大分県に生息する哺乳類は約46種。絶滅種、外来種、亜種、野生化種などの扱いにより数種類の増減がある。今回選定対象とした哺乳類は前回調査時に削除(ランク外)とした種の動向も加え28種。基本的には現地踏査による確認により行ったが、聞き取り調査や文献調査等も実施した。
前回「レッドデータブックおおいた2011」の選定種21種のうち、11種はランクの変更はなく、5種はランクが上がり、2種はランクが下がり、3種は選定種から外れた。また、今回絶滅種を含む5種が選定種に追加された。これらの見直しによって本レッドリストにおける哺乳類の選定種は前回より2種増加して、23種となった。

※県内分布に記載されている市町村名は【大分県旧市町村図】に従った。ただし、一部は九重山系、祖母・傾山系などの名称を記載した。

2 選定種に追加した種について

ニホンカワウソとニホンオオカミの2種を絶滅(EX)として追加した。また、ウサギコウモリをⅠA(CR)、コテングコウモリとオヒキコウモリを情報不足(DD)として追加した。合計5種を新たに選定種に追加した。

3 ランクを上げた種について

ツキノワグマ、ホンドノレンコウモリ、ニホンモモンガ、ムササビ、ニホンカモシカの5種

4 ランクを下げた種について

ヤマネ、モモジロコウモリの2種。ニホンザル、キクガシラコウモリ、ニホンイタチの3種は削除に。

5 生育・生息地に大きな変動があった種について

ムササビ

生息確認情報が少なく、生息環境の悪化が考えられる。詳細な調査は行っていないが、本種は広葉樹の樹洞を好む傾向が強く、こうした樹洞を提供する樹林の減少が想定される。(管理放棄による倒木、ニホンジカの採餌害による倒木など)

ニホンカモシカ

生息地において近年急増したニホンジカ Cervus nippon Temminckとの競合、疥癬症や防鹿ネットによる死亡、錯誤捕獲などとの関係が指摘され個体数は激減している。

6 その他特筆すべき事項について

今回の見直し作業では「ニホンカワウソ」と「ニホンオオカミ」を絶滅(EX)として記載した。本来は「レッドデータブックおおいた2001」において記載すべき種であったが、現存種に限って調査を実施したため記載漏れを起こしてしまった。

7 参考文献等

和名、学名、種の配列

  • 川田伸一郎・岩佐真宏・福井 大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽 創・姉崎智子・横畑泰志(2018)世界哺乳類標準和名目録.哺乳類科学、第58巻別冊.

(基本的には属名+種小名とし、上記の目録で省略されている人名は削除。亜種の場合は亜種名を末尾に記載)

各種の分布・生態、その他

  • 安藤 元一(2008)ニホンカワウソ.東京大学出版会,1-1.
  • 長谷川善和・小原巌・曾塚孝(2004)石灰岩洞窟内で発見された九州産ニホンオオカミ遺骸.群馬県立自然史博物館研究報告(8),57-72.
  • 平岩米吉(1992)狼-その生態と歴史(新装版).筑紫書館,308.
  • 石黒直隆(2012)絶滅した日本のオオカミの遺伝的系統,日獣会誌.65:225-231.
  • 熊本県(2019)レッドデータブックくまもと2019.
  • 環境省(2004)種の多様性調査哺乳類分布調査報告書,環境省自然環境局生物多様性センター.213.
  • 環境省(2019)環境省レッドリスト2020.https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/booklist
  • 宮崎県(2015)宮崎県のレッドリスト2015年度改訂版.
  • 日本クマネットワーク(2014)ツキノワグマおよびヒグマの分布域拡縮の現況把握と軋轢抑止および危機個体群回復のための支援事業報告書:135-159.
  • 大西尚樹・安河内彦輝(2010)九州で最後に比較されたツキノワグマの起源.哺乳類学会,50(2):177-180.
  • 小野美喜夫・高橋信武(1994)オオカミの根付け.動物考古学, 13:73-76.
  • 大分・熊本・宮崎県教育委員会(1989)昭和62・63年度九州山地カモシカ特別調査報告書.
  • 大分・熊本・宮崎県教育委員会(1996)平成6・7年度九州山地カモシカ特別調査報告書.
  • 大分・熊本・宮崎県教育委員会(2004)平成14・15年度九州山地カモシカ特別調査報告書.
  • 大分・熊本・宮崎県教育委員会(2020)平成30・令和元年度九州山地カモシカ特別調査報告書.
  • 大分自然博物推進委員会(2017)大分自然博物誌-ブンゴエンシス-,2巻.
  • 大分自然博物推進委員会(2019)大分自然博物誌-ブンゴエンシス-,3巻.
  • 大分自然博物推進委員会(2021)大分自然博物誌-ブンゴエンシス-,4巻.
  • 佐々木 浩(2016)日本のカワウソはなぜ絶滅したのか.筑紫女学園大学人間文化研究所年報, 27:95-111.
  • 安田 健(1987)江戸諸国産物帳.晶文社,139.
  • 安田雅俊(2011)中九州の哺乳類相の特徴. 九州森林研究,(64),26-29.

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